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神亀・ひこ孫

神亀酒造 (埼玉県蓮田市馬込1978) 048-768-0115   酒蔵見学:原則不可   直接購入:原則不可(応相談)
創業:   年間製造:800石
埼玉が、日本が誇る「純米蔵の先駆者」。
 1967年に純米酒造りを再開。 1983年には普通酒の製造を中止。
 1987年、全国で先駆けてアルコール添加を廃止し、全量純米蔵となる。
 東京農業大学醸造科学科出身の小川原良征氏専務(1946年生)は、現在でも少ない、造りにも理解のある蔵元。
 原料米をすべて酒造好適米でまかない、その栽培法・品質にもこだわる。
 さらに、すべての商品の麹づくりを、手間はかかるが細かい調整のしやすい蓋麹法で行う。
 つくられたお酒は、一部の生酒をのぞき、かならず2〜3年の以上熟成を経てから出荷される。

「常温保存でもへこたれない、熟成して旨くなる、燗で活きるお酒」の代表格として、各地の蔵に影響を与える。
 小川原専務の指導を受けた蔵として、三重「妙の華・英・るみ子の酒」、神奈川「丹沢山」など。

「神亀」は、五百万石やひとごこちなど、様々な酒米を使用したシリーズ。
「ひこ孫」は、鳥取県の田中農場、徳島県阿波町などで栽培された最高品質の山田錦を使用したシリーズ。
 その他、低精白の「仙亀」もある。
神亀 純米酒 辛口」、「神亀 純米酒 甘口」、「神亀 真穂人」、「神亀 純米酒 ひとごこち」、「神亀 純米 ひやおろし
ひこ孫 純米酒
」、「ひこ孫 純米 樽酒」、「ひこ孫 純米吟醸 小鳥のさえずり」、「ひこ孫 純米大吟醸」、
ひこ孫 純米吟醸 7号酵母」、「ひこ孫 純米吟醸 9号酵母」、「ひこ孫 純米吟醸 槽口酒(
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ひこ孫 純米吟醸 かるくいっぱい」、「仙亀 純米酒 阿波山田錦80%

神亀 本醸造 大古酒 昭和54年
」、「神亀 純米 大古酒 昭和57年

神亀 純米酒 辛口
 好み度:★★★★☆
 1800ml:2800(2940)円   720ml:1400(1470)円   アルコール度数:15.7   日本酒度:+5
 原料米:五百万石・山田錦・美山錦   精米歩合:60%   酵母:協会9号   酸度:1.6   熟成:2年

 燗映えするお酒の代表として、燗酒ファンに支持される2年熟成酒。
 従来は五百万石だけで醸されたスマートなタイプでしたが、現在ではふくよかなタイプに変更されています。

 熟成酒のため、やや色づき、スモーキーな香りがあります。 口当たりは丸く、舌の上を転がるような感触。
 やさしい甘味、存在感のある旨味がふくらみます。 苦味と酸がきれいに調和して、後口は軽快です。

 冷温では魅力が隠れてしまうので、せめて常温、理想としては50度くらいの熱めの燗が良いでしょう。
 熱燗で揚げ物と、ぬる燗で焼き魚という相性が抜群です。 塩辛・燻製などの珍味にも相性が良いです。
神亀 純米酒 甘口
 好み度:★★★★☆
 1800ml:2800(2940)円   アルコール度数:15.5   日本酒度:−1
 原料米:山田錦・五百万石・美山錦   精米歩合:60%   酵母:協会9号   熟成期間:2年

 上記「神亀 辛口」と対をなす商品ですが、少量生産のこちらは目にする機会が少ないかもしれません。
 「甘口」とありますが、この蔵の中では甘めという。 ほどよい甘味とお米本来の旨味が堪能できます。
 つややかで濃密なボディを、しっかりした酸で支えているため、キレがよく余韻はドライな印象さえ受けます。

 蔵元は、疲れを取るなら「神亀 甘口」の燗、というおすすめをしています。
神亀 真穂人 [純米酒]
 好み度:★★★★☆
 1800ml:2800(2940)円   720ml:1400(1470)円   アルコール度数:15.7   日本酒度:+6
 原料米:五百万石(千葉県三里塚産、堆肥栽培)   精米歩合:60%   酵母:協会9号   酸度:1.6
 熟成期間:3年

 生産者の名前まで記されたお酒。 旧タイプの「神亀 純米酒」と同様、五百万石だけで造られています。
 この蔵の商品たちの中では、上品な苦味が活きたほっそりとスマートなタイプ。
 他の商品同様スモーキーな熟成香がありますが、後口に向かってシャープに収束する印象。

 燗が冷めてぬるくなってきたあたりで、もっとも個性的な苦味が堪能できます。 日向燗〜ぬる燗がベスト。
 苦味をたがいに引き立てるような、ピーマンを使った料理、カキのような貝類と合わせたいです。
神亀 純米酒 ひとごこち
 好み度:★★★☆☆
 1800ml:2762(2900)円   アルコール度数:16.5
 原料米:ひとごこち(長野県飯島町産)   精米歩合:60%

 2008年から登場した、長野県産ひとごこちを使用したお酒。
 ガッシリ骨太の「神亀・ひこ孫」のラインナップの中では、苦味を強調したシャープなタイプ。
 色もこの蔵にしては無色に近いほど。

 しっとりとなめらかな口当たりなのに、意外とドライでスリム。
 スッと消えて、栗の甘皮のようなほろ苦い余韻に変わります。 まさにお米のちがいが出ています。
 熱燗よりも、ぬる燗〜常温に冷めてきたところで甘味・酸味のバランスが良くなります。
神亀 純米 ひやおろし  [純米酒(生詰)]
 好み度:★★☆☆☆
 1800ml:2762(2900)円   アルコール度数:15.5   日本酒度:+5
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:60%   酸度:1.4   熟成期間:1年半

 春にしぼったお酒を秋に出荷するというひやおろしですが、この蔵はさらに1年間熟成させてから出荷します。
 他の商品にくらべて熟成が浅いため、まだ飲みごろではないと感じる方もいらっしゃると思います。

 「和浦酒場」中野さんが「燗冷ましでもまだ硬い」と指摘するように、まろやかさ・ふくらみに欠ける印象です。
 見方を変えると、「神亀」のまだ若いヤンチャな姿を堪能できる貴重なお酒でもあります。
ひこ孫 純米酒
 好み度:★★★★☆
 1800ml:3000(3150)円   720ml:1500(1575)円   アルコール度数:15.7
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:55%   酵母:協会9号   酸度:1.6   熟成期間:3年

 3年熟成のため、黒糖のような個性的な熟成香があるので、初心者向けではありません。
 スモーキーな含み香は、原料米の異なる「神亀 純米酒」と共通していて、蔵の個性を感じます。
 舌の上で溶けるように香味が広がってゆくようすは、まろやかという言葉が似合います。

 常温の時点で味の太さを感じますが、トロリとした感触や力強い味わいを楽しむのなら燗でしょう。
 ピザと合わせた際の相性の良さにはおどろきました。 チーズ・油に負けません。
ひこ孫 純米酒 樽酒
 好み度:★★★☆☆
 1800ml:3000(3150)円   720ml:1500(1575)円   アルコール度数:15.7
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:55%   酵母:協会9号   酸度:1.6   熟成期間:3年

 お正月用のお酒として、上記「ひこ孫 純米酒」を樽に詰めた商品。
 樽に詰めていた期間によって差はありますが、木の香りが強すぎる場合は「ひこ孫 純米酒」で割ります。
 木の香りが、本来まろやかな「ひこ孫 純米酒」にドライな感触を加え、またちがった印象になります。
ひこ孫 純米吟醸 小鳥のさえずり
 好み度:★★★★☆
 1800ml:5000(5250)円   720ml:2500(2625)円   アルコール度数:16.5   日本酒度:+5.5
 原料米:山田錦(鳥取県田中農場産、無農薬栽培)   精米歩合:50%   酵母:協会9号   酸度:1.5
 熟成期間:2年以上

 「神亀・ひこ孫」は個人的に好きな蔵ですが、いちがん好きなのが、この「小鳥のさえずり」。
 鳥取「諏訪泉 純米酒 田中農場」と同じく、鳥取の田中正保氏による無農薬栽培米を使用しています。
 目ざめの悪いお酒なので、開栓して空気に触れさせる必要があります。 それから燗です。
 開栓前も後も常温放置というのは楽なのですが、購入後すぐ飲むというのには適していません。

 非常におだやかな香りながら、含むとお米をみがいたお酒ならではのさわやかさも感じます。
 ドライな飲み口で、複雑で豊かな旨味がどんどん広がってゆきます。
 甘味をおさえた透明度の高いお酒なので、味の幅・時間変化がわかりやすく、奥行きがあります。
 軽快でいて味わい深く、そしてスカッと晴れる後口。
 豊かな余韻にはやさしさがあり、繊細さと力強さが共存しているお酒です。

 脂の乗った魚や肉類、しょうゆ・みそを使った料理など、さまざまな料理に合わせられます。
 「お酒が主」と考える私としては、ゆっくりと時間をかけてお酒だけを楽しむのもアリだと思います。
ひこ孫 純米大吟醸
 好み度:★★★★☆
 1800ml:11000(11550)円   720ml:5000(5250)円   アルコール度数:16.9   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(徳島県阿波産、無農薬栽培)   精米歩合:40%   酵母:協会9号   酸度:1.3
 熟成期間:2年以上

 熟成した大吟醸を燗で飲む。 この蔵の方針を表した、最高級酒です。
 華やかさではなく、お米の味を追求した蔵の集大成。
 「和浦酒場」蔵川店長いわく、「大トロのあぶりに合わせるための燗酒」。 ぜいたくですね。

 ボリュームをみれば上記「小鳥のさえずり」よりトーンダウンしていますが、繊細さや奥行きはすばらしいです。
 ドライなのに、酸もひかえめなのに、なぜか充実した飲みごたえ。
 甘味でも酸味でもなく、これこそがお米の旨味なんだと思います。 押しよせる重層的な旨味。
 お米を削りすぎて個性をなくした香りだけの大吟醸とは、次元がちがいます。
ひこ孫 純米吟醸 7号酵母
 好み度:★★★★☆
 1800ml:4800(5040)円   720ml:2400(2520)円   アルコール度数:16.5   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:50%   酵母:協会7号   熟成期間:2年

 吟醸酒ではあまり用いられない、協会7号酵母で醸されたお酒。
 他には、「神亀・ひこ孫」で修行した石川達也杜氏が、広島「竹鶴」で吟醸酒に7号酵母を使用しています。
 「熟成に向く燗で楽しむ食中酒」を徹底するには、果実のような吟醸香の少ない7号酵母が向いています。

 米をしっかりと磨いたことにより、ヨーグルト様のやわらかい香りが感じられますが、果実香は皆無です。
 つややかな飲み口ながらドライな感触もあり、緻密な酸、米の旨味が複雑に交錯しています。
 もちろん、冷温より常温、常温よりぬる燗で魅力が発揮されてゆきます。
ひこ孫 純米吟醸 9号酵母
 好み度:★★★★☆
 1800ml:4800(5040)円   720ml:2400(2520)円   アルコール度数:16.5   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:50%   酵母:協会7号   熟成期間:2年

 上記「7号酵母」バージョンと対をなす、この「9号酵母」。
 吟醸香が高くなる9号酵母ですが、この商品は華やかな香りではなく、おだやかな穀物香。
 ドライな印象もある「7号酵母」バージョンにくらべ、こちらはまろやかさが目立ちます。

 やはりこのお酒も燗で米の旨味、緻密な酸を楽しみたいです。
ひこ孫 純米吟醸 槽口酒 「悦」   [純米吟醸(無濾過、生)]
 好み度:★★★★☆
 1800ml:5900(6195)円   720ml:2950(3097)円   アルコール度数:16.6   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(鳥取県田中農場産、無農薬栽培)   精米歩合:50%   酵母:協会9号   酸度:1.4

 毎年ラベルが変わる、「槽口」シリーズ3本のうちのひとつ。
 通常商品「ひこ孫 小鳥のさえずり」のしぼりたて・うすにごりバージョンです。
 冷温も良いのですが、「小鳥のさえずり」といえば、やはり燗でしょう。

 フワ〜ッと、お米らしい、そしてどこか栗のような、落ちついたやさしい含み香です。
 うすにごり部分のストレートなお米の甘味・苦味の後に、ふっくらとした旨味が現れます。
 奥のほうで稲ワラのような雰囲気を感じる、余韻の豊かな、立体感のあるお酒です。

 関西風ダシのおでんに合わせたところ、どちらも飲むごとに深まる味わいで相性抜群でした。
ひこ孫 純米吟醸 槽口酒 「芯」   [純米吟醸(無濾過、生)]
 好み度:★★★★☆
 1800ml:5900(6195)円   720ml:2950(3097)円   アルコール度数:16.6   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(徳島県阿波産、無農薬栽培)   精米歩合:50%   酵母:協会7号   酸度:1.4

 毎年ラベルが変わる、「槽口」シリーズ3本のうちのひとつ。 徳島産の山田錦、協会7号酵母のお酒です。

 冷温ではみずみずしい酸味が楽しめます。 この蔵らしいスモーキーな香りと、若さゆえの苦味が独特。
 お米の味がストレートに感じられる、芳醇なタイプを好む方にはたまらないお酒だと思います。
 神亀酒造のお酒で、冷やしても楽しめるお酒はめずらしいです。

 ぬる燗にすると、冷温では硬く感じられた口当たりが、まろやかになります。
 栗のような、ふっくらとおだやかな含み香です。
 お米らしい旨味、ワラのような雰囲気など、次々に要素が現れては重なり合って調和してゆきます。

 純米酒らしいお米の味と、吟醸酒らしいさわやかさをあわせ持った、すばらしい純米吟醸です。
 失敗した純米酒の重さと、失敗した吟醸酒の味気なさを持った、失敗した純米吟醸とはちがいます。
ひこ孫 純米吟醸 槽口酒 「創」   [純米吟醸(無濾過、生)]
 好み度:★★★★☆
 1800ml:5900(6195)円   720ml:2950(3097)円   アルコール度数:16.6   日本酒度:+4
 原料米:山田錦(徳島県阿波産、無農薬栽培)   精米歩合:50%   酵母:協会9号   酸度:1.4

 毎年ラベルが変わる、「槽口」シリーズ3本のうちのひとつ。 上記「芯」とは、酵母ちがいの商品です。

 基本的に上記「芯」と同様の味わいですが、こちらの「創」のほうが後口がやさしい印象です。

 冷温〜常温〜ぬる燗、開栓直後〜1年熟成とそれぞれ試してみましたが、熟成してからの燗が最高でした。
ひこ孫 純米吟醸 かるくいっぱい   [純米吟醸(活性にごり)]
 好み度:★★★☆☆
 500ml:485(510)円   300ml:300(315)円   アルコール度数:10.0   日本酒度:+5
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:60%   酵母:協会9号   酸度:1.4

 低アルコール・発泡タイプのにごり酒。 軽く飲める食前酒を意識したネーミング。
 値段は安いものの、最高品質の山田錦を使用しているところは他の「ひこ孫」シリーズと同様です。

 甘口のシャンパン風のにごり酒とはちがい、純米酒らしい落ちついたお米の旨味があります。
 シュワッと爽快な炭酸と軽やかな味わいは、食前酒としてだけでなく、食後酒・締めの一杯としても最適。
仙亀 純米酒 阿波山田錦80%
 好み度:★★☆☆☆
 1800ml:2200(2310)円   アルコール度数:14.5   日本酒度:+6
 原料米:山田錦(徳島県阿波産)   精米歩合:80%   酵母:協会9号

 米をあまり削らず、雑味の元にもなる米の外側の部分を残して、個性を引き出したお酒です。
 2004年に精米歩合の制限がなくなり、純米酒と名乗れるようになりましたが、以前からも造られてきました。

 このような低精白のお酒にありがちなことですが、飲みごたえはあるのに後口があっさりしています。
 潔い・軽快というより、物足りない印象を受けました。 個人的にはもう少し余韻が残ってほしいです。
 燗にしてドライな感触と複雑な旨味が楽しめるところは、さすが神亀酒造というところでしょうか。
神亀 本醸造 大古酒 昭和54年(1979年)
 好み度:★★★☆☆
 720ml:6500(6825)円   500ml:4500(4725)円

 2007年に飲んだときには、すでに28年熟成となっていました。
 「神亀」は1987年に全量純米化したため、本醸造は20年以上昔のお酒しか存在しない、貴重なお酒です。

 しっかりと熟成した古酒の魅力を引き出すなら、燗そして燗冷ましでしょう。
 クリアに輝いたレモン色で、オリ・にごり・黒ずみがないところが好印象です。

 アーモンド、ザラメのカステラ、松葉のような熟成香。
 若干アルコールの分離を感じ、ブランデーのような雰囲気もあります。
 味わいは、熟成香に負けない骨太の酸が印象的。 燗冷ましでは、さらに酸が魅力的になります。
 このころから「神亀」はゴッツイお酒だったのかと感心してしまいました。
神亀 純米 大古酒 昭和57年(1982年)
 好み度:★★★☆☆
 720ml:6000(6300)円   500ml:4300(4515)円   アルコール度数:17.5   日本酒度:+7
 原料米:五百万石(新潟県産)

 2008年10月に飲んだので、約26年の熟成です。 神亀酒造は仕込み期が10月からという、早い蔵です。
 小川原専務直々による燗でいただきました。

 色合いは非常に濃く、上記「本醸造 大古酒」と似ています。
 ところが、「本醸造 大古酒」と香りはずいぶんと異なりました。
 刺激的な香りがなく、みごとに練れています。 つややかで、まろやかな飲み口です。
 熟成香・旨味・酸それぞれが強いのですが、ふわふわと長くつづく余韻まで、やさしい印象を受けます。
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